トレーニングで走り抜けた二の丸公園の桜の蕾が膨らみ始め、春の訪れを感じる季節となりました。
今日のこの佳き日に、ご来賓の皆様、校長先生はじめ諸先生方、保護者の皆様に見守られ、このように盛大な式を挙行して頂き、心より感謝申し上げます。
地元大分から熊本に、期待と不安を胸に入学したあの日から3年が経ちました。
私が中央高校に入学を決めた1番の理由は、バドミントンで結果を出すために、橋本麻衣子先生に指導していただきたいという思いがあったからです。中学3年生の時、とても熱心で、バドミントンの技術を言語化して伝えてくださる橋本先生と、上を目指して一致団結している先輩方に感動し、私もここで挑戦してみたいと思いました。
しかし、いざ入学してみると今までと180度違う環境や上下関係に戸惑い、毎日朝早くから夜遅くまで部活動と学校生活に追われ、帰っても寮でまた気疲れし、自分はここに何をしに来ているのか分からなくなりました。
何より悔しかったのは、自分が思うよりも、自分が頑張れないこと。
勉強との両立も、人間関係も、家族に会いたいという思いも、自分の思うようにならず、もう辞めたいと思う自分と、今辞めても地元のお世話になった人たちにどんな顔を合わせるのかと思う自分とで、とても辛かったのを覚えています。乗り越えても乗り越えても、目の前にある『試練』に、負けそうになったことが沢山ありました。
それでも、この3年間私がここまでやってこれたのは間違いなくこのチームのおかげです。最後まで熱くご指導いただいた先生、憧れ続けた先輩、ついてきてくれた後輩、そして何より、苦しい時も嬉しい時も常に隣にいてくれた同級生、みんながいてくれたからこそ、試練に立ち止まることなく前に進むことができたのだと思います。
両親は、私が小学2年生から始めたバドミントンを続けるために、「熊本中央高校に行きたい」と言ったあの日から、文句ひとつ言わずにずっと応援してくれました。試合の時には必ず応援に駆けつけてくれ、寮にも頻繁に仕送りをしてくれて、私が辛いと電話をしたら何も言わずに話を聞いてくれました。そんな父と母に結果で恩返しをしたかったのですが、結局思うような結果を出すことはできませんでした。それが唯一の心残りです。しかし、私は一度も父と母に結果を出せない自分を責められたことはありません。どんなに辛くてもどんなに苦しくても家に帰れば当たり前に暖かい空間があり、自然ともう少し頑張ろうと思えました。
3年間、色々な感情を共有してきたクラスメイトの存在も、とても大きいものでした。自分がどんなに辛くても、隣を見ると、勉強と部活の両立をし、検定に向けて自主学習に励み、積極的にボランティア活動に参加している友がいました。それぞれの目標に向かって努力する姿を見せてくれていたからこそ、私も負けずに頑張ろうと思えました。受験期にはみんなずっと不安な気持ちと闘っていたと思います。それでも沢山の先生方と一緒に、放課後も休日も机に向かう姿に、希望進路に合格させて欲しいと神にも祈るような気持ちと、尊敬の念を抱かずにはいられませんでした。それは、3年間かけて、個性を尊重し、クラス全体で頑張ろうとする雰囲気を一生懸命作ってくださった担任の先生のおかげでもありました。
みんなは覚えていますか?
体育祭で後輩に大敗したこと。
ソーラン節の途中で曲が止まってしまったこと。
何度練習しても面接で上手く話せなかったこと。
誰もが勝てると思っていた試合で、涙を飲んだこと。
何度も何度もやり直した自分の作品。
何度挑戦しても高い壁だった検定。
理想と現実の狭間で試行錯誤した実習。
そして、周りの進路が決まっていくことに焦りと不安で押しつぶされそうだった日々。
思い返してみると、本当に沢山の試練を乗り越えて、今日の私たちがいます。この3年間、私たちには254通りの挑戦があったのだと思います。
今、卒業の日を迎え、自分が「試練」だと思っていたものが、形を変えていることに気付きます。あの日、あの時、大きな試練に見えていたものは、私たちの背中を押し、進路を切り拓き、成長させてくれています。自分の力が試され、足りないものを知ることはとても勇気がいることでしたが、同時に前に進む糧にもなりました。
在校生の皆さん、私から皆さんに伝えられることがあります。
それは「人は誰かに支えられて成長する」ということです。私達は、身近にいる人はもちろん、自分が知らないところでもたくさんの人に支えられています。私自身、友人、家族、先生方、沢山の人に支えられ、この3年間を一歩ずつ確実に前に進むことができました。また、私達自身も、意図しないうちに、実はたくさんの人を助けているのだと思います。そんなふうに、お互いが支え合いながら少しずつ成長していくのだと、この3年間を振り返って、強く実感しています。どうか、辛い時は1人で抱え込まずに周りの人に頼って、一歩を踏み出す勇気を持ち続けてください。この熊本中央高校には、皆さんの歩みを支えてくれる人が沢山います。
これまで私達と共に喜び、時には厳しく指導してくださった先生方、3年間本当にありがとうございました。これから私達はそれぞれ新たな道で力強く歩んでいきます。きっとまた新たな試練に立ち止まることもあるかと思いますが、そんな時はこの中央高校で得た学びを思い出し、常に感謝の気持ちを忘れず進んでいきます。
お父さん、お母さん、私を熊本中央高校に入学させてくれてありがとう。
中央高校に来たからこそ出会えた人がたくさんいました。一生大切にしたい仲間ができました。尊敬する先生たちと出会えました。新たに進みたい道ができました。あの時の私の選択は間違ってなかったと、今、胸を張って言えます。本当に、ありがとうございました。
私たちにとって節目となる今年は、終戦から80年となる年でもあります。世界を見渡せば、こうして平和な空の下で卒業式を迎えられていることが、決して当たり前では無いと痛感します。これからの世界で何ができるのか、何をすべきなのか。生きるとはどういうことか。考えても無駄だと思う人もいるかもしれません。しかし、悩み、思考し、どうすればいいかを話し合える、それこそが平和である証のようにも思います。先人たちが築いてくれた平和の礎の上に、私たちは考え、行動していくことを、ここに、真剣にお約束いたします。
別れを惜しみつつ、ここにご臨席いただいている全ての皆様のご多幸と、熊本中央高等学校の益々のご発展を祈念して、答辞といたします。
令和7年2月28日
卒業生総代 原田依蕗